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Blog de Jessica556

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  • ーー夜明け
    publié le 25/06/2021 à 13:24

    ーー夜明け。

     

    夜半からまた降り始めた霧雨はやがて雪となり、荒野は一面の雪に覆われた。

    静かな夜明けだった。

    うっすら積もった雪が、まるで全ての音を吸い込むようなーー一瞬の静寂。

     

    馬のいななき。

    軍を勇ましく鼓舞する、太鼓の音。

     

    高島軍は、陣営の前にずらりと整列した。

     

    「投石隊ーー」

    「応ーー!」

    「弓隊ーー」

    「応ーー!」

    「槍隊ーー」

    「応ーー!」

     

    隊長の声に、男たちの地鳴りのような唸り声が呼応する。

    愛馬の真白に乗った信継が、腕を高く上げた。

     

    「騎馬隊ー!!」

    「応ーーーっ!」

     

    キリリと引き締まった顔の、勇猛果敢な信継の姿に、殿の信八や、仁丸を始め兄弟たちは心酔すらする。高島の重臣たちも信継に見惚れた。

     

    荒川を挟んで、向こう側には沖田連合軍がずらりと並んでいる。

     

    「数の不利があっても、高島に歯向かうか…」

    「叩きのめせばいいのだ」

    「大将首を捕れば大出世。城持ちも夢ではないぞ」

    「油断めされるな。

    窮鼠猫を噛むということもある」

     

    「…」

     

    信継はまっすぐに沖田軍を見ていた。

     

    「兄上…どう思います?」

     

    次男の信春が馬を寄せて信継のそばに来た。

     

    「…」

     

    「弓隊の10番隊…頭数が足りないらしいのです。

     

    足軽やならともかく…弓隊が、です」

     

    信継は険しい顔のままで、信春を見る。

     

    「…そうか。

     

    何人いない?」

     

    「2名です」

     

    「その者たちは」

     

    「いずれもここ1年以内に高島に来た新参者ですが、腕が立ちます。名はーー」

     

    ーーと、信康も馬を近づけてくる。

     

    「兄上、槍隊の8番隊から報告でーー」

     

    信継と信春が信康を見つめた。

     

    「点呼したところ、3名いないと」

     

    「…新参者か?」

     

    「あ、はい、名前はーー」

     

    信継は2人の弟から紙を受け取る。

     

    「わかった。その件については任せろ。

    牙蔵!」

     

    信継が呼ぶと、どこからともなく牙蔵が現れる。

     

    「…はいはい」

     

    目を合わせると、牙蔵はニッと笑う。

     

    「…」

     

    言葉はなくとも、言いたいことはわかってーー信継から紙を受け取ると、牙蔵はまたひらりと姿を消した。

     

    「抜けた穴については問題ないな?」

     

    信継が信頼を込めた目で見つめると、信春も信康も姿勢を正す。

     

    「はい。問題ありません兄上」

     

    「よし。頼んだぞ。

     

    油断するな」

     

    「はい!」

     

     

     

     

    「…動き出したようですね」

     

    後藤格兵衛が馬上の信継を見上げる。

     

    「ああ」

     

    「5名で済めばまだいいのですが…。

    予定通りの、作戦変更と行きましょう」

     

    「そうだな」

     

     

     

    「全軍、前へ!」

    「出陣ーー」

     

    どよめきが地鳴りのように辺りを包んだ。

     

    法螺貝の音。

    太鼓が唸るように激しく打ち鳴らされる。

     

    荒川の向こうからも沖田軍が進軍している。

    とうとう、戦の火ぶたは切って落とされた。

    ーーーーー

     

    多賀家。

     

    当主の芳輝の意向で、多賀家で働く人たちは一緒に広間で食事をとることになっていた。

     

    いい大根が手に入って、詩は加代に教えてもらいながら、一生懸命夕餉を作った。

    ふろふき大根は好評で、その後、洗い物も済ませ、加代と一緒に湯浴みも済ませる。

    気付かないまま、それでも少し疲れていたらしいカラダはほぐれて柔らかくなった。

     

    「桜はホントに小さくて細っこいねえ。

    まあまあ。おなかなんかぽきっと折れそうじゃないの。

    ちゃんと食べてるの」

     

    「ええっ…加代さん、食べてますよ。

     

    父と母はまあ背が高い方だったのですが…」

     

    着物を着ながら、詩は恥ずかしそうにつぶやく。

    何故かちらりと、信継との洞窟での夜の思い出が脳裏をよぎった。

     

    『絶対に嫁にする!』

    『まだ子どもみたいに…カラダが小さいからな…

    もうちょっと、…成長しないと』

     

    父の声に似た、深い声…

    何もなかったとはいえ、初めて男性に、肌をさらしてしまったあの夜…

     

    カッと頬が染まる。幸い、加代は背を向けているので気づかれることはなかった。

     

    ーー今頃、信継様たちは…戦、に…

     

    「はは…そうなのかい。じゃあそのうち桜も大きくなるかね」

     

    加代のからりとした笑い声に、詩の意識は呼び戻される。

     

    「…って、縦ばかり伸びたらまた細くなるよ。

     

    この仕事は体力勝負だから。しっかり食べてよく寝ることだ」

     

    「ふふ…はいっ」

     

    「はは」

     

    2人で笑い合った。

     

     

     

    「では加代さん、今日は本当にお世話になり、ありがとうございました。

    おやすみなさい」

     

    「ああ、お休み。明日の朝も早

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