八木家の子供が沖田の背に乗りながら説明する。沖田はさも意外そうに反応した。「…意外と言いたげですね」「えっいや、そういう印象がなかっただけでっ」「つまり意外ということですね。別にいいですけど」最期の着物のシワを丁寧に伸ばし、物干し竿にかけると、Yaz避孕藥好唔好 縁側に腰かけた。沖田も隣に座る。庭を見れば色付いた紅葉が柔らかな風に揺れていた。何とものどかな雰囲気。特に言葉はないが、その穏やかな空気が沖田は好きだった。隣の紫音をチラリとみれば、なびく髪を耳にかけ、紅葉を見ている。見ているだけならはかない、美しい女子。沖田はその中身を知りたいと改めて思った。「あ、あの…紫音さんがここに住んでくれて嬉しいです」「私も皆さんと近くにいられて嬉しいですよ。退屈しません」「退屈…退屈だったんですか?」紫音は半身を投げ出し転がる。腕を大きく広げて、天井を見た。
「やっぱりちがいますね」「何がですか?」同じようにごろんと横になって、沖田は紫音の視線を追った。「天井の裏から見るのと、天井として見るの」紫音の答えに、沖田は苦笑いした。やはり普通とは違う。…知りたい。聞いたら答えてくれるだろうか?意を決して聞こうとしたその時、「紫音、いるかぁ?」と空気を読めない男、原田がまたもや邪魔をした。一度ならず二度までも…何度意を決せばいいのか。沖田は無意識に原田を睨みつけた。「お、何だ総司もいんのか…って何怒ってんだよ」沖田の明から様な視線に、少々びくつきながら原田は紫音を覗き込む。「左之助、近い」「へへっそそる顔してんなぁと思ってよ。それより今からちょっと付き合えよ」「どこに?」「杏屋。着物置いてあるから取りに行こうと思って」未だに突き刺さる沖田の視線をものともせずに、原田は紫音を起き上がらせる。杏屋といえば、先日左之介に連れていかれた揚げ屋である。そういえば着替えに借りた着物も返さないと。紫音は立ち上がり、丁寧に畳んである着物を手に戻る。「着物も返さなきゃ」「そんなん別にいいのに」「だったら新しい着物の方がいい」二人だけの会話を目の前で繰り広げられ、沖田は苛々しながら話の内容を読み取る。杏屋…左之さんが行きつけの島原のお店…そこに着物………返す!?いきついた答えに焦り、沖田は慌てて紫音の手を取る。「ちょっとま「触らないで下さい!」勢いよく払いのけられ、沖田は胸を刺されたような痛みを覚える。思わず払ってしまった紫音は申し訳なさそうに謝った。「すいません…私、手を握られるの駄目なんです」「あ、ぼ、僕だから…ですか?」「沖田さんだからじゃなく、皆です。だからあんまり気にしないで下さい。すいません…行きますね」気まずくなってしまって、紫音は左之介の背中を押して、足早に出ていく。後に残された沖田は、未だに痛む胸をにぎりしめ、揺れる紅葉を見上げた。朱く色付く紅葉。それは自分の心のようだと思った。あぁ、僕は…紫音さんが好きみたいだ―――こんなに楽しいのはいつぶりだろう。童子のように、走り回り、遊ぶ事に夢中で疲れる事なんて知らなかった。日が暮れるのが嫌でたまらなかったあの頃。君と出会ってから、僕はそんな事ばかり思い返しているよ。