押し倒されて上から見下ろされてる状態じゃ立場上完全に不利だ。

まともに顔を見れたもんじゃない。

 

 

「お茶っ！一旦お茶飲んで落ち着きません!?せっかく熱いの持って来てくれはったのに冷めちゃいます！」

 

 

「これから熱くなるだろうから丁度いいんじゃないか？

火照った体には冷たい方がいいと思うけど。」【針灸生髮】梅花針生髮真的可以改善脫髮？

 

 

「ほてっ!?」

 

 

後頭部を思い切り殴られたような衝撃。

土方の拳骨なんて比じゃない。

 

 

からかわれてるだけ。真に受けちゃいけない。

冷静になろうと言い聞かせてみるけど，

 

 

“この人のモノになりたい”

 

 

このまま流れのままに身を任せるのは罪だろうか？

多分本能はこの瞬間を待ち望んでいた。

 

 

店でも屯所でも色んな男の人に囲まれて過ごしたけど，こんなに胸の高鳴りを与えてくれる人はいない。

 

 

『でもでも…いきなりこれは……。』

 

 

困り果てて泣きそうな顔になっていたのか，桂も困惑したように苦笑して畳に押し付けていた三津の腕をそっと離した。

 

 

「狡いね，そんな顔されたら何も出来ないよ。」

 

 

桂は三津の隣りに体を横たえて，小さい体を自分の胸に引き寄せた。

寝転がった状態で向かい合う。

 

 

「これならいい？」

 

 

『これでもあんまり落ち着かへんけど…。』

 

 

必死に頷いて嫌じゃないと言おうとする。

桂の綺麗な顔が苦笑で歪んでしまったのを見て，嫌われたんじゃないかと不安になる。

 

 

桂に愛されたいから，いい子でいたい。そんな三津の不安を拭い去るように，手の平で頬を包み込む。

 

 

「君は私がどれほど会いたかったか知らないだろう。

いつでもどこに居ようと三津の事を想って一日を終える。

誰と居ようと私の中には三津だけだ。」

 

 

こんな台詞をスラスラと吐けるのは言い慣れてるからだろう。

何人もの女性に言ってきたんだろう。

 

 

だから嘘かもしれない。

今のこの一時を愉しむ為のものかもしれない。

 

 

『もぅ…。何か言いたいのに上手い事言い返されへん…。』

 

 

いや，言い返す事は可能だった。

“今まで何人に言って来たの？”

って冗談めかして笑えば良かったけど，

 

 

『これがホンマやったら嬉しいねんもん…。』

 

 

だから否定したくなかった。

わざわざ自分から“嘘なんでしょ？”って言いたくなかった。

 

 

『私はこんなに悩まされてるのに涼しい顔して…。』

 

 

桂は真っすぐに三津の目を見ていた。

それの目は一点の曇りもなくて，嘘を言ってるような目じゃないと思った。

 

 

「綺麗な目…。」

 

 

ついポロッと零してしまった。

綺麗な目は一瞬だけ見開かれて，それから柔らかく微笑んだ。

 

 

「驚いた。三津の方から口説いてくるなんて。」

 

 

「違っ！

口説いてるんちゃいます，褒めたんです！

桂さんの方こそあの口説き文句いつもどこで誰に言うてるんですか？」

 

 

顔を背けるのはかなわないから，不貞腐れて目を伏せた。

 

 

『よし，言ったった！』

 

 

勢いでまくし立てて言われっぱなしの自分を返上し，桂に気付かれない所で小さく拳を握った。

 

 

「……。

私の情報網を甘く見ちゃいけないよ。」

 

 

『むっ…，誤魔化した…。』

 

 

それには思わず反らした視線を元に戻した。

それを待ってたかのように顔を寄せられ，コツンと額がぶつかった。

 

 

「私の情報の全てが幾松からのものではないからね。

でも三津が嫉妬してくれるなら幾松に教えてもらったと言っておくよ。

 

それより十日もこっちに居るのにどうして宗太郎君の所にばかり通うんだい？

 

一人になるのを待とうとしてもずっと斎藤君が傍にいる。」

 

 

更に倍以上でまくし立て，指先で三津の頬を上から下に撫でた。

 

 

「それで…やっと捕まえた。

このまま連れて帰ってしまおうか。

恩返しが終わるまで待つつもりだったけど，待てないよ。」

 

 

『分かるかい？一回り近く歳の離れた君に必死になる私の気持ちが。』大人の男が，歳の齢十八ほどのそこいらの娘に熱を上げてるなどと聞けば，呆れられるに違いない。

 

 

『馬鹿にされても構わないよ，この娘が必要なのは変わらないさ。』

 

 

顔を赤く染めて睫毛を震わせてるのを見て，たまらなくなる。

そのまま首の角度を変えて唇を奪いに行った。

 

 

唇を重ねながら，手を取り指を絡め合うと溶けてしまうような感覚に教われて，体全体に熱を帯びる。