幸いな事にゲッソリナ市内でいきなり暴れ出すような兵士は居なかった。秘密裏に配備されているとは言え、ゲッソリナに漂う峻厳な空気が解雇兵達に物言わぬ圧力となったようだ。解雇された兵士達の多くは、" 武官たちは 那些行动只是我内心变化一一清除旧事 物 「でも、真の強者は軽々しく戦わないと聞いていますが "ハンベエが『ボルマンスク軍に奔るさ』と喝破したように、王都から東に去ってボルマンスク方向に向かった。だが、全ての兵士が東に去ったわけではなかった。西に向けて去って行く兵士は居なかったが、南に向った者達がいた。割合で見ると解雇されたされた兵士の三人に二人が東へ残り一人が南に向かっていた。元々彼らは今は亡きステルポイジャンが南方から呼び寄せた兵士達であり、その方向なら故郷に向かっている事になる。.解雇作業は十数日に渡ったが、その間モルフィネスとドルバスはゲッソリナ市内に秘かに兵を配し、不穏な動きが有れば直ぐ様対応するべく構えを取っていた。解雇された兵士達が暴動を起こした時の用心の為でもあった 大人しく故郷に帰って百姓に戻る・・・敗残の後投降兵となり更にお役御免となった身であれば、それもおかしからぬ身の振り方。行く末に幸多かれと祈ってやるのも悪くはない。 が、違った。 南に向かった解雇兵達は途中の穀倉地帯パタンパと言う町に集結したのだった。その方面の解雇兵のほとんどがそこに集まったのを見ると、どう考えても予め打ち合わせていたとしか思われない。さて、策士モルフィネスは兵士達をただ解雇したわけではなかった。解雇する兵士達の中に群狼隊兵士をはじめとする諜報員を潜り込ませていた。 三万人の解雇兵に対し三十人、千人に一人の割合で諜報員を配備していた。潜り込ませたタイミングは解雇通告の時点である。実は解雇通告の少し前、『御前会議』が兵士の解雇を決定した直後から兵士の間では旧ステルポイジャン軍に所属していた兵士は解雇されると言う情報は直ぐに広まっていた。 ハンベエ達王女軍の領袖達は敢えて情報に蓋をする事も無かったし、又この手の情報は隠しても反って広がるものである。 その中でいち速く解雇兵の糾合に動いた男がいた。名をキューテンモルガンと言う。従前旧ステルポイジャン軍に所属していた時も特に勇名を馳せるわけでもなく、又敗戦の後王女軍に吸収された後も頭角を現したという話も聞かない。全く目立たない一兵卒であった。だがこの機に当たって突然変異の覚醒でもしたのだろう。俄に解雇の見込まれる兵士達の間を回って南方攻略を説き始めたのである。ステルポイジャン敗死の報はゴロデリア王国の南方にも届いていた。元々、ステルポイジャンは南方の駐屯兵をこぞって王都ゲッソリナに呼び寄せた。為に南方では治安を維持する者がいなくなっていた。そこへステルポイジャンの死である。今やもう野放し状態の無法地帯であった。 西にタゴロローム東にボルマンスクが有るように、南にも都市と呼べるものが有った。カクドームという名の都市であった。キューテンモルガンはこれに目を着けた。いや、目を向けるよう諸兵士に説いた。『何首になったって案ずる事はねえ、南にはカクドームがガラ空きじゃねえか、みんなで南に帰れば俺達の天下じゃねえか。』
ナルホド、言われて見ればそのとおりだ。仮にゲッソリナ政府から謀反の嫌疑を掛けられても、今や南方は無政府状態。治安維持という大義名分がある。