間取りは大体2LDKと言った所。学生寮に2部屋あって何に使うんだかと疑問に思うが、まあいい。必要最低限の家具は揃っていたため、とりあえず冷蔵庫を開けてみる。ちなみにこれも原動力は魔力
陪月服務、魔法石という石を使って動いているそうだ。冷蔵庫は流石に空っぽだった。ぱちんと、指を鳴らす。音と同時に出現した冷蔵庫の「中身」から飲み物を取り出して、冷蔵庫を閉じた。一口飲んで喉を潤し、制服を脱ぐ。今朝制服を着た時は、何気に少し面白かった。学生服なんて何年ぶりだか、もう笑うしかない。俺の記憶している学生服は学ランだったため、ブレザーと言う意味では初めてだが。制服はハンガーに掛けて着替えると、いつもの黒コートを羽織る。暑かろうが寒かろうが関係なく、基本的にコートはデフォルトだった。体感温度なんて、チカラを使って調節すればいいわけだし。黒一色の格好がやはり落ち着く。紺色のブレザーが嫌いなわけじゃないんだが、どうも違和感は拭えない。ネクタイも邪魔だし。着替えてから後は、手持ちぶさた。寮の部屋……というより、この世界に私物を増やす気はあまりない。教科書類は机に積み上げたし、服は基本的に制服なのである程度で問題ない。暇潰し用のローブもある。かなり、充分だ。流石にさっき別れたばかりでハルの部屋に行けば、荷物の整理中だろう。これは隣のエートも同じ。暇だ。便利なのも大概にしないと不便。こういう時は、チカラの使いすぎとかを反省する。まあ今回の場合最大の原因は、俺に「まともに生活する気がない」ことだったりするが。俺は暇が嫌いだ。絶対唯一の大敵。面白いことがないとつまらん。――――結果、ハルの荷物整理などの諸都合を配慮した時間、約20秒。「……早くないか?」多少引きつった顔の、ハルと対面していた。「窓に座ってるから気にするな」「落ちる。というより、そもそも開かないぞ」「ぶち破るとか」「人の部屋だぞ、おい」「ちぇー」基本的に俺は、相手が仕事中じゃない限り、相手の都合は考えない。言葉にすると結構酷いが、まあ事実なので仕方ない。今回はこれでも、少しは考えた方だ。ちなみに何故「仕事中」は除くかと言えば、俺が仕事の邪魔されると嫌だから、だったりする。