「それから、修行の旅であれば、この後は、しゃんとした山伏の格好でいった方が良いぞ。」（修行？山伏？何か意味わかんねぇ。まぁ、いいや。）Gは、会釈をして店を出ると、商家の並びに立ち寄りHKUE DSE再び大量に万引きをした。途中、宿屋の主人の言葉を思い出し、念のため、山伏の衣装も探し、入手すると、その足で町を出た。しばらく歩くと、周辺の人気が少なくなってきた。（街道に沿ってるはずなのに、さびれてんなぁ。）食料や旅道具も豊富に持っているGは、そのまま木造城を眺めながら通り過ぎ、松坂で右に折れ、熊野古道に入って行った。熊野古道に入ると、所狭しとそびえる木々が目に飛び込んできた。まだ、鮮やかな紅葉に彩られた木々達も多く、果てしなく続く山々の間には、川が流れていた。道々ですれ違う人は非常に少ない。時々、山伏や僧などを見かけるが、一般の旅人や浪人、商人などは一切見かけない。（何か、不気味な雰囲気だな。）景色も良く、気持ちの良い筈の旅なのだが、どうもGの胸中からは不安感がなくならなかった。

隆行がウトウトしだした頃、下から複数の声が近づいてきた。隆行が身体をずらして下を見ると、約50人もの山賊達が少し離れたところに見えた。（げっ。せいぜい20～30人くらいだと思ったのにHKUE 連登あいつら、あんなに大所帯なのか。）約50人の山賊達が、徐々に隆行の方に近づいてくる。途中、他の茂みから現れた者を加えたり、10人の単位で集団を離れていったりと、その集団は数を増減しながら進んでくる。頭目と思しき男が、「まだ、見つからんのかぁ！！五郎三郎、こいつらを連れて向こうを見てこい！！」等と言っている。（こりゃぁ、明らかに俺を捜してるな。）隆行は腹を据え直し、下の様子を注視していた。（さて、どうするか。あの偉そうなのが真下に来てくれればやりようがあるんだけど。）だが、残念ながら、隆行の想いは届かず頭目らしき男は隣の木の根元の方へ行ってしまった。その男達は、夜中から隆行を探し続けていたのであろう。隣の木の根元に、着くと、そこで停止し、40人を4組に分け四方へ放った。頭目の周りには、10名の男達を残すのみとなった。（チャンスだ。）この機を逃す隆行ではない。

　　総帝は、魔法がほぼ完成したのを見計らって、勢いよく飛び出した。　奴の注意が再びこちらに向く。振り上げられた斧のような武器が頭上に振り下ろされ、総帝は左の刀で防いだ。それと脫髮問題時に、右の刀で袈裟懸けに斬りつける。　無論、奴は避けようとし、兎がいない右後ろに退避して──総帝の魔法が発動した。　床を突き破って延びてくるのは、太く逞しい樹の根。　──植物属性最上級魔法“ウルートスタブ”。　蛇のようにうねっていたはずのそれは、まるで金属の棒にでもなったかのように硬くなり、反射的に上半身を反らした奴の足に突き刺さった。雪兎たちも根にあたり、その身体を散らした。「────ぐっ……」　小さな呻き声をあげ、奴は根を切り落として無理矢理足を引き抜き、よろよろと退避する。　白い床に、青みがかった赤い何かが、水溜まりを作った。　だらりと腕を下げ、俯いた奴は、何も言わず、ぴくりとも動かない。　──何か猛烈に嫌な予感がした。　総帝は隙を見せず構えた。そして奴をじっと眺めた。　奴の肩が、小さく揺れだした。小刻みなそれは、──まるで嗤っているかのよう。　否、彼は嗤っていたのだ。顔をあげた奴の充血した瞳は爛々と輝き、薄い唇は弧を描いている。悪寒が走った。　愉しくて愉しくて堪らない──そんな表情で、奴は嗤っていたのだ。.

　　──何て寂しい光景なのだろうか。　総帝は漠然と思った。何が寂しいのかわからない。しかし、この光景は妙に寂しく見えたのだ。　風が吹き抜ければ、生臭い臭いが鼻をつHKUE DSE。顔をあげ、辺りを見回せば、強い魔力の集まりがある方向に、ぼんやりと発光する何やら大きな建造物が見えた。「あれ、……ですか」　立ち止まっていた足を、そちらへと向ける。追い付いてきた仲間を引き連れて、総帝は再び疾走した。　森どころか木すらも見当たらない一面の血色の花畑。暗闇の中から飛び出してくる魔物を一蹴しながら突き進む。　──遠くに、月明かりに照らされて浮かび上がる人影が見えた。　十中八九魔人である。魔力の大きさからすれば、おそらく最上級魔人であろう。　立ち尽くすその影の後ろから、いくつもの人影がかけてくる。下級から上級までいる魔人のその数、およそ百。こんなに多くの魔人を、一度に見たのは初めてだ。　一行は何の躊躇もせずに、その群れへと突っ込んでいった。総帝は先頭で刀を振るい、一撃で切り捨てていく。　奴等を殺めることよりも、前へと進むことを重視した総帝の今の戦い方では、無論多くの魔人が生き長らえて、後ろにいる帝や隊員たちに襲いかかっていく。　進む早さは勿論遅くなるが、致し方ない。.

　　薄緑の長い髪の隙間から、彼女のエメラルドグリーンの瞳が覗いている。乱れた髪を慌てて手櫛で整えた彼女は、直後頭を下げた。「ごめんなさいっ！　お皿、落としちゃって……」HKUE 傳銷　目を移せば、確かに彼女のいた場所の前に、皿であったと思われる残骸が散らかっていた。魔法で片付けようとして、思い出す。「っお怪我は!?」　彼女はしゃがみこんで、おそらくこれを拾おうとしていたのだ。手を飛び散った破片で怪我してはいないだろうか。「だ、大丈夫です……」　首を横に振る彼女であるが、念のためにとその白い手をとった。わずかに血が滲んでいるのを見つけて顔をしかめれば、彼女は気まずそうに目をそらす。「“ヒール”」　光属性初級魔法“ヒール”。魔法を使ったことで彼女に怒られかけたが、この程度の魔法が負担になるような身体の鍛え方はしていない。「“風よ”」　皿であった破片は風属性初級魔法で集め、適当に引っ張り出してきた袋に入れて、ゴミ箱の隣に置く。　その際、調理台の上に置かれた調理途中の料理が目に入り、しばし身を硬直させた。「……料理、していたのですか」　──大きさが不揃いなじゃがいも、千切りのつもりか細く切られているが所々に太いものが混じったキャベツ、皮も剥かずに切られたにんじん。.

「……それでしたら」無表情のまま頷いたガイアは、いつもと何かが違う気がした。彼の瞳を見つめて、理由に気がつく。「今更緊張なさいますか」「……普段と違 HKUE DSE 學生 状況に、少しばかり戸惑いを覚えているだけです」普段と違う状況というのは、サキカの服装か、それともこの建物内という場所的な状況のことか。「俺がこの服に袖を通したのを目になさったのは、初めてではないでしょう？」「……いえ、初めてです」意外な答えに、サキカは目をしばたたかせた。「……それより何より、貴方様の今のお姿に慣れません」──文脈からして格好のことではないだろう。ならば、思い当たるのは一つだけだ。「……瞳、ですか。これに関しては後ほどお話いたしますよ」踵を返し、ロードかイヴかリミを捕まえようと視線を巡らせると、銀縁眼鏡をどこかに置き忘れたアークと目が合ってしまった。眉根を隆起させた彼は、真っ直ぐにこちらに向かってくる。「……サキカ、だろ」サキカより頭一つ分近く背の低い彼は、伸ばした手でサキカの口元のファスナーを下ろした。「えぇ。……説明は後にさせてください。時間がありません」彼は曲がりなりにもギルドの隊員である。緊急事態だということは、疾うに理解しているだろう。暫くサキカの瞳を見つめていた彼は、唐突にひざまずいた。頭を垂れ、サキカに敬意を示すかのように片膝を地につけたのだ。.

──闇属性最上級魔法“呑み込み無に返すは漆黒の渦”。魔法名が長いそれは、闇属性最上級魔法の中で最も神級魔法に近いとされている魔法である。黒い渦のようなものが現れ HKUE DSE  の龍を呑み込む。奴が指を鳴らすと、黒いそれは姿を霧散させた。「中々やるねぇ……。次はこっちから行くよ？」血色の目を細めたラフィアが、一瞬にしてサキカの目の前に現れた。──転移魔法である。下から振り上げられた剣を刀で受け止め、退避する。直後、袈裟懸けに斬りつけきたものは身を翻して避けた。「“ダークランス”！」「“ウルートスタブ”！」闇属性最上級魔法“ダークランス”、植物属性最上級魔法“ウルートスタブ”──。ラフィアとサキカが同時に魔法を放つ。植物属性魔法も、最上級魔法と同じ理由で使いたくなかったが、そうも言ってられない。奴の魔力からして、ラフィアの属性は闇と火なのだ。氷属性も植物属性も火属性と相性が悪いが、植物属性の方が氷属性よりも多少炎の耐性がある。闇属性が来るとわかっていたならば問題なかったが、火属性が来る可能性があったために植物属性魔法にしたのだ。相性が悪いとはいえ、得意であるがゆえに他の属性よりは火属性魔法にも効果を及ぼせる。闇色の槍と、地面が盛り上りそこから生えてきた太い木の根がぶつかる。魔法の形状だけでいえば、こちらが有利だ。木の根が槍を巻き付くように受け止めて、締め壊した。.

鋼糸をのばし、それを左手の指に巻き付けて、ガイアは疾走する。指に巻き付けたそれを、彼は思い切り振った。受け止めようとした相手の武器が、すっぱりと切断される。驚愕に目を見開い  HKUE DSE 相手の生徒の背後へと素早く回り込み、首筋に手刀を叩き込んだ。崩れ落ちる生徒を放置して、次の相手に紅の瞳を向けるガイア。どことなく怠そうな表情をしているのは、つまらないとでも思ったからであろう。しかし、その行動と表情に恐れ戦いたのか、相手の生徒は顔を強張らせて一歩後ろへ退いた。「うわぁ、悪魔降臨的な」レイトが顔をひきつらせて呟く。──その後、結局、アークたちが活躍する前に相手のグループは棄権してしまったのだった。「んじゃあ、飯食いに行くか？」腹をすかせたらしいレイトは、退場していくガイアたちを尻目にサキカに訊ねた。「あ、じゃあ俺の部屋に来る？ たまには作るよ」「お、作ってくれるのか！」レイトが青い目を輝かせた。どうやら、サキカの料理は彼のお気に召していたようだ。しかし、彼は直後「あ」と声を漏らし、立ち上がろうと浮かせていた腰をすとんと落とした。「やべ、ガイアに怒られる。……作るの夕食にして、あいつら終わるまで待合室から出れないから」選手であるガイアたちは、昼食時も待合室を抜け出すことはできない。ならば昼食はどうするかというと、係の生徒が用意するらしい。.

「……対価は俺との手合わせ？」「よくわかってるじゃないか」にやりと笑う男。細い目が更に細くなり、一本の糸のようになる。どうせ実力は周りに知れてしまったのだ。これ  HKUE 傳銷 上隠していることはできないのだから、手合わせくらいは付き合うことにする。「……護衛ほったらかして来て、このまま帰るつもりはないでしょう？」「まあ、な」やはり、男はここで戦うつもりだったらしい。話が纏まったところで、ロードに視線を向け直す。すでに戦い始めていた彼はこちらに気がついていないようだ。「ロード先生！」「っあぁ？」オルス語に切り替えたサキカの声に、ロードはこちらに視線を向けず、中級魔物を斬り裂き、返り血を浴びながら再び大剣を振り上げる。「闘技場の方を任せても宜しいでしょうか」闘技場の警護といっても、広いあの第一闘技場の周囲の警戒もしなければならないのだ。この学園に詳しくない近衛武士の男には任せられない。しかし、こちらの方の手助けならば、この男で十分である。説明せずともそれがわかったのか、ロードは軽く頷いて闘技場の方へと走っていった。「魔物は任せたよ」「了解」男とはジパング語でそれだけをかわして、サキカは魔方陣用チョークの入った木箱を片手に、魔物を出現させている元凶である魔方陣へと駆け寄った。.

旅やサバイバルといったものに馴れていない者ならば、ここで眠りに落ちてしまっていたであろう。しかし、幼い頃から半サバイバル生活を送ってきたサキカが、そのような失態を犯すはずがない。頭髮護理とくに問題もなく時間は過ぎていき、約束の六時間が経ってユリアスを起こした。寝起きの彼女に見張りの交代を告げると、一気に覚醒したらしい彼女は顔を赤らめてこくこくと頷いた。木の幹に身体を預けたまま寝るべく目を閉じようとしたが、彼女が口にした言葉に思わず身体を起こししまった。「……膝を使いますか？」慌てて強く首を横に振り、なかったことにしようと赤らんだ顔を彼女から背けて、再び身体を木の幹に預ければ、小さく楽しげな笑い声が聞こえた。×××××××××××サキカの睡眠時間は短い。睡眠は六時間のはずが、四時間と少し経った頃に、サキカの目は覚めてしまった。辺りはまだ暗闇に包まれている。暗いせいでよくわからないが、靄がたちこめており、服が湿っている。身体を起こし、ついでに座った体勢で寝ていたために強ばってしまっていた筋肉を解す。「あ、起きましたか」腕に木の枝を抱えたユリアスが、少し離れたところに立っていた。「まだ早いと思うけど……」彼女は自身の腕にはめた時計をちらりと見る。「……普段から睡眠短いから。もう十分だよ」サキカの睡眠時間は長くて五時間。忙しいときなど、二、三日連続の徹夜が当たり前だ。.